「SIerが忙しい」
「残業ばかりで周りも倒れた人が出ている、、もう限界」
SIerにおける独自の文化が合わずに仕事を辞めたいという声は多く聞きました。
過去にIT系エンジニアの転職斡旋をしている会社で業務委託として多くのエンジニアの方とお話しすることがありましたがSIerの方の比率は大きかったと認識しています。
2chの生みの親であるひろゆき氏も「はっきり言って、SIerで働いているエンジニアは今すぐ逃げた方がいい。」とコメントしています(元記事はこちら)
この記事ではSIerが辞めたいと思った時に今の状況を改善できることに繋がる情報をまとめてみたのでぜひ参考にしてみてください。
SIerが仕事を辞めたいと思う時に良くある声
①. 経営層のIT知識不足によって発生する理不尽な要求に対応することが辛い
②. エクセルやIE(下手したらWindowsXPなど)といった時代錯誤な環境での仕事(事務作業を含む)が多くスキルアップが絶望的で辛い
③. 時間単価のビジネスモデルに業界が最適化されているため仕事の早い優秀な人より時間を稼いだ人の方が評価される理不尽が辛い
④. 多次請け構造による不条理が辛い
なぜSIerを辞めたいのか、それは当然辛いことがたくさんあるからですよね笑
上記の声のようにほとんどの辛さの問題はSIer業界のビジネス構造が特殊すぎることが原因だと思います。
そのせいで暇ですることがないと思うこともあれば、異常な短納期で深夜残業が当たり前で誰かが潰れてしまう極端なことが起こってしまいがち。
プログラマーは本来、1人で10人分の生産力となり得る世界で実力差が如実にあらわれますよね。
それを建設業のような肉体労働力の人員と同じような集め方をして安定した労働力の供給を確保しようとするため歪な構造が生まれることはご存知だと思います。
ですので歪な構造の”犠牲者”となってしまった人は転職を検討するのは当然だと思います。
ぶっ倒れる前に、理不尽を避けるためにも転職を事前に検討すべき業態ではあります。
ちょっと待った、SIerは本当に悪いことだらけ?
SIerを辞めたい人の声は業界のデメリットの部分でもあります。個人の力でどうしようもありません。
しかしそんなSIerは本当にデメリットだけなのでしょうか。特に働きすぎて辛い気持ちでいっぱいな人も見方を変えてみると良いかもしれません。
SIerのメリット
①. 未経験でも現場経験を積みやすい
②. いろいろな技術に触ることができる
③. 元の依頼者が公共機関や大手企業といった体力のある組織が多い
④. プロジェクト毎で入れ替わるので人間関係で悩みにくい
⑤. 優秀なエンジニアでなくてもやっていける
⑥. PMのキャリアアップの道がある
SIerならではの不条理はありますが、だからこその良い部分もあります。
①. 未経験でも現場経験を積みやすい
人員調整のために未経験であっても現場に放り込んでもらえることがあります。
研修も殆どなしでいきなり放り込まれてしまうこともありますが、未経験で経験を積めるのはかなり価値があります。
お金を払っても経験を積めるものではありませんのでここのメリットは過小評価されすぎな印象もあります。
教育がないと嘆く声が多いけれど、IT業界はネットや書籍の情報が山ほどある特殊な業界なので見方を変えれば大きなデメリットではないかもしれません。
私が機械エンジニアの頃はネットでググっても出てこない技術だったので先輩から覚えるしかなく苦労しました。
②. いろいろな技術に触ることができる
多様なプロジェクトに関われるため多様な技術に触れることができます。
優秀な人ほど苦しい目に合うという意見もありますが、優秀な人にとっていろいろな言語に触りながらお金を稼げるというのはそれだけで大きなメリットです。
自社Webサービスなどであれば決まった技術に対して小さな改善の繰り返しの仕事になりやすいはずです。
③. 元の依頼者が公共機関や大手企業といった体力のある組織が多い
商売相手が太いのは基本的に良いことです。
旧態依然な業種だったりするかもしれませんが逆にそれでもなお生存できているということはそれだけ体力があるということ。
自社Webサービスのスタートアップはよくモダンな技術やモダンな働き方で羨ましかったりするかもしれませんが、多くの経営者はその煌びやかさの裏でかなり苦しんでいたりします。
また事業が上手くいっていても運が悪いとすぐに倒産します。創業10年以降も生き延びる会社は6.3%とも言われています。
また事業が成長するにつれ欲しい人材の質が変わってきますのでどんなに絆が深かったとしても斬られる時はスッパリと斬られます。
みんながみんな転職で上手に会社を渡り歩けるとは思いませんので商売相手が太いのはとても良いことではないでしょうか。
④. プロジェクト毎で入れ替わるので人間関係で悩みにくい
プロジェクト毎に必要な人材がアサインされていくスタイルが多いため人間関係に縛られません。
会社を辞める人でもっとも多い悩みのひとつが「人間関係」です。
ずっと同じ人たちと働かなくて済むことは仕事にウェットな関係を持ち込むことが苦手な人にとってはかなり嬉しいことです。
⑤. 優秀なエンジニアでなくてもやっていける
当たり前?ですがどんな技術もすぐに覚えて高速で実装できるスーパーエンジニアというのはごく稀です。
世の中がエンジニアの純粋な技術力だけを評価するようになれば多くの人たちがリストラされてしまいます。
主語が少し大きくなりますが日本の教育は落ちこぼれを出さないようにする教育です。
会社も同様に出来損ないな人であってもすぐにリストラできないようになっています。
SIerも一番できない人を想定して画一的に人員を集めているので平均的な技術力があれば食いっぱぐれません。
他の国の人たちからすると羨ましいのではないでしょうか。
⑥. PMのキャリアアップの道がある
PMへと転向したい人は少ないですが収入の面やAIに置き換えられにくい将来性のある職種としてのPMはかなり魅力的です。
自社Webサービス企業などの互いがしれた人同士のPMも価値はありますが、様々なプロジェクトを歩き渡れるSIerのPMはより汎用性が高く食いっぱぐれがないと思います。
嫌いな理由は色々あると思いますが将来性を考えるととても良いキャリアになると思います。
PMになるつもりはなくとも、専門知識のないクライアントとコミュニケーションをとって仕事を進めたり、バッファーを用意したりと独学で個人だとできない経験は貴重です。
SIerから転職(辞職)を検討すると良さそうな人
上のメリットを踏まえた上でも辞めたいのであれば検討しても良いかもしれません。
特に以下のような人は検討すると良いでしょう。
1つの技術を深めたい人
いろいろな技術を身に付けられる、裏を返せばなんでも屋さんになりやすいといえます。
そのため自社でシステムを抱えている企業の人事担当などからするとアピールしづらくなってしまいます。
若いうちは良いですが年齢をそれなりに重ねてからだとなんでも屋さんがキャリアの邪魔になる可能性があります。
エンジニアとして現場で仕事を続けたいのであれば1つ(少数)の技術を深めていける会社へ転職する方が良いでしょう。
プログラミングしたいのにできない人
「未経験からいろんな現場を経験できるって言われてるけど全然プログラミングできません」
という人も中にはいるかと思います。
入社前はあたかも色んな技術が触れるという触れ込みだったのにいざ入社するとエクセルや多くの時間が事務や調整作業に奪われてしまったりします。
ひどい人だと家電量販店の店頭販売をやらされたりという声も。
プログラミングを目的に入社したもののできない人は転職の準備をしつつお金を貯めて行動へ移す準備をなるはやで進めた方が良いと思います!
割りを食う人
いわゆる優秀な人が多くなると思います。
仕事が早く終わってしまうが故に次の仕事が早く回ってくるだけで収入も上がらないだけでなく負担だけが増していく理不尽があります。
こうした人は市場価値との悪い意味で乖離があり相当な収入を損しています。
もちろん収入の面だけでなく成長するモチベーションも奪われてしまいますのでキャリアとしてもマイナスが多いです。
割りを食っている気がしたら転職を検討しましょう。
Web系が転職候補に良くあがるけど…
SIerからの考えられる転職先は大体決まっています。
他SIerの企業、社内SE企業、自社システム保有の企業、ITコンサル、フリーランス(常駐型か)あたりが殆どではないでしょうか。
第一線で技術を磨きたい人は社内SE
社内SE(自社Webサービス企業を含む)などが良いと思います。
零細企業で数人の体勢でシステム全体を長くリファクタリングしていく方向かメルカリのようなメガベンチャーの優秀な社員と切磋琢磨していくポジションが良いかと思います。
(とは言っても結局は成長に応じてエンジニアを集めるハメになりマネジメントやらされたりはあるかもしれないので難しいですが)
腕試ししたい人はフリーランス
経験さえあれば仕事を選り好みしやすいフリーランスはSIerからでも目指しやすいかと思います。
例えば勉強会などで知り合いを作り、仕事をもらって土日に副業で請けたりして信頼性を構築しておきます。
それから辞めたあとでも仕事をもらいそこから横の繋がりでもらっていけば仕事を選べるようになっていくかと思います。
年収を上げたい人はITコンサル
営業寄りに転向していきたいのであればコンサル業も良いかと思います。
年収はかなり上げやすいはずです。
日本のIT遅れは顕著でありどこかの段階で大きくIT分野で成長しないといけないはずです。
その時にITコンサル業であればかなり収入面では期待できるかと思います。
理不尽に揉まれたくないなら二次請けの会社
多くの人はSIerの働き方が悪いというよりもSIerのビジネス構造のせいでおかしなタスクの割り振りに泣きをきっと見ているかと思います。
そして泣きを見るのは大抵は末端のSIerです。
つまり、より上流のSIer企業であれば今よりマシになりやすいです(もちろん例外もあると思いますが)
かと言って一次請け企業は年功序列でプログラマーの募集などはあまりなくキャリアも中途で築くことは難しいと思いますので二次請けあたりのSIerを狙って転職してみるのもありではないでしょうか。
よくSIerは将来性がないと言われますが最初に廃業するのは3、4次請の会社です。
さらに一次請け企業はSEがあまりいないので仮に不景気に呑まれても最後まで残るのではないでしょうか。
SIerから転職するならまずはエージェントを経由しよう
SIerから転職するならエージェントを経由すると良いでしょう。シンプルに効率が良いからです。
IT業界は流動性が高い市場であるためエージェントがたくさんあります。
またエージェントはどういった技術にニーズがあるか、どういった人が転職しやすいかの指導経験とデータを持っています。
相談するのは無料ですし無理やり勧めてくるような会社は無視すると良いでしょう。
もちろん身近に相談できる人がいれば優先順位としてその人たちに相談すると良いかと思いますが人材市場を見通した上でアドバイスをくれる人はそうそういません。(いたらラッキーなので焼肉でも奢って話を聞くべきでしょう)
そのため現状の問題点(仕事でネックとなっている悩み)を整理してその上で悩みを解消できる転職先にどういった会社があるのか聞き出してみましょう。
営業力のある人はWantedlyやビジネスSNSなどを使って自分から面会しにいっても良いかもしれません。
企業側からすればエージェントへのマージン(年収の3割)が必要ないため雇ってもらいやすくなります。
SIerに10年後のキャリアはあるのか
少なくとも現場の技術だけで食っていきたい人には厳しいものがあると思います。
大手企業のシステム開発の需要自体が変化していく可能性があります。
AWS採用を決めた日本政府、次はデジタル課税の議論を加速できるか
上の記事にあるように日本の政府ですら外資系のクラウドサービスなどを採用しています。
この流れでSIerはなくなることはないと思いますが、上流工程とAWSなどと連携できる一部のエンジニアだけが業界に残っていくことになる可能性があります。
その時に応じて転職はできると思いますがいっせいに人件費をカットされたタイミングは選びたくないものです。
一方でPMやコンサル、営業寄りの仕事はさらに需要が増していくかと思います。
インフラ自体は開発する必要がなくなるということは顧客とのやり取りがより価値となっていくと推測するからです。
まとめ
SIerで辞めたい人は辛いところにいったん目をつむりSIerの良いところを改めて問いただしてみると良いかもしれません。
それでもなお耐えられない、辞めたい!と思った人もいきなり止めるなんてことはせず、自分の悩みを分析して”準備”を整えた上で行動に移すことをオススメします。